アウトサイド系の理論
あえてキーの外の音を使い、また戻ってくる緊張と解決のテクニック
アウトサイドとは
アウトサイドとは、あえてキーやコードスケールの外側の音を使って一時的に不協和な緊張感を作り出し、その後また元のキーに「戻る」演奏スタイルの総称です。
前のトピックで出てきた、外れた音を使うことを「アウトする」と言う、その「アウト」と同じ意味です。このトピックでは、代表的なやり方を、実際の音で聴いて確かめていきます。
代表的なアウトサイドのアプローチ
①ペンタトニックのずらし: 半音上または下のペンタトニックスケールを一時的に使う
②クロマチックアプローチ: 目的の音に半音階で滑り込む
③サイドステッピング: 短いフレーズごと半音上下にずらして、また戻す
3つとも、代表的な例として挙げたもので、ほかにもやり方はあります。次の節から、1つずつ聴いてみましょう。
聴いてみよう① ペンタトニックのずらし
Dm7の上で、Dマイナーペンタトニック(D・F・G・A・C)の音でフレーズを弾きます。2小節目だけ、同じ形のフレーズを半音上のE♭マイナーペンタトニック(E♭・G♭・A♭・B♭・D♭)にずらして弾き、3小節目で元に戻ります。
「キーの中だけ」は、ずらさずにDマイナーペンタトニックだけで弾いたものです。2小節目が、どう変わるかに注目して聴き比べてみましょう。
Dm7の上で、ペンタトニックを半音上にずらして、また戻す
上の段が、伴奏で鳴っているコード、下の段が、その小節で弾く単音です。黄色の欄が、半音上にずらして弾くところ(2小節目)です。
| 1小節目 | 2小節目 | 3小節目 | 4小節目 |
|---|---|---|---|
Dマイナーペンタトニック(D・F・G・A・C)だけで弾く | |||
Dm7 DCAGFGAC | Dm7 DCAGFGAC | Dm7 DCAGFGAC | Dm7 D |
2小節目だけ、E♭マイナーペンタトニックにずらす | |||
Dm7 DCAGFGAC | Dm7 E♭マイナーペンタ E♭D♭B♭A♭G♭A♭B♭D♭ | Dm7 DCAGFGAC | Dm7 D |
聴いてみよう② クロマチックアプローチ
II-V-I(Dm7 → G7 → Cmaj7 → Cmaj7)の上で、1小節ごとに、目的の音(Dm7ではF、G7ではB、Cmaj7ではG)へ、半音ずつ近づいて着地します。たとえばDm7の小節では、E♭ → E → F と、半音ずつ上がってFに着きます。
「コードトーンだけ」は、同じ小節で、半音の動きを入れずに目的の音へ進んだものです。半音で滑り込む2音が入ると、どう聞こえるかを聴き比べてみましょう。
II-V-Iの上で、目的の音へ半音階で滑り込む
上の段が、伴奏で鳴っているコード、下の段が、その小節で弾く単音です。黄色の音が、目的の音へ半音で滑り込む2音です。
| 1小節目 | 2小節目 | 3小節目 | 4小節目 |
|---|---|---|---|
半音の動きを入れずに、目的の音へ進む | |||
Dm7 IIm7 DAF | G7 V7 FDB | Cmaj7 Imaj7 ECG | Cmaj7 Imaj7 E |
各小節の最後の音(F・B・G)へ、半音で2音ずつ近づく | |||
Dm7 IIm7 DAE♭EF | G7 V7 FDD♭CB | Cmaj7 Imaj7 ECAA♭G | Cmaj7 Imaj7 E |
聴いてみよう③ サイドステッピング
Dm7の上で、Dm7の音でできた短いフレーズ(A・C・D・C)を弾きます。2小節目だけ、その同じ形のフレーズを、半音下にずらして弾き(G♯・B・C♯・B)、3小節目で元に戻ります。
「キーの中だけ」は、ずらさずに弾いたものです。ずらした小節で、ぶつかる感じが出て、元に戻ったときにどう聞こえるかを、聴き比べてみましょう。
Dm7の上で、短いフレーズを半音下にずらして、また戻す
上の段が、伴奏で鳴っているコード、下の段が、その小節で弾く単音です。黄色の欄が、半音下にずらして弾くところ(2小節目)です。
| 1小節目 | 2小節目 | 3小節目 | 4小節目 |
|---|---|---|---|
Dm7の音(A・C・D・C)のフレーズを、ずらさずに弾く | |||
Dm7 ACDCACDC | Dm7 ACDCACDC | Dm7 ACDCACDC | Dm7 D |
2小節目だけ、同じ形のフレーズを半音下にずらす | |||
Dm7 ACDCACDC | Dm7 半音下にずらす G♯BC♯BG♯BC♯B | Dm7 ACDCACDC | Dm7 D |
注意点
アウトサイドは「外に出てから戻る」ことで効果が生まれます。聴き手は、不協和な緊張のあとにキーの中の音へ解決すると、「緊張してから、また落ち着いた」という一連の物語のように感じ、そこに心地よさを感じやすいと言われています。
戻る感覚がないと、この「緊張→解決」の物語が完成しないため、ただ音を外しているだけに聞こえてしまう、というのが一般的に言われる注意点です。
アウトサイドの主役は、外に出ることではなく「戻り方」です。外した後にキーの中の音へ着地できると、意図した緊張として聞こえます。
