コードの押さえ方(ヴォイシング)
ルートや5度を省略して、3度・7度を中心に弾く、ジャズギター特有のコードの押さえ方
なぜルートや5度を省いて弾くことが多いのか
ここまでのトピックで見てきたコードの押さえ方は、ルート・3度・5度・7度の4音を全部弾く形でした。ですが実際のジャズの演奏では、音を減らして弾くことがよくあります。
理由の1つは、バンドで演奏するときは、ベースがルートの音を弾いてくれることが多いからです。ギターが同じルートをもう一度弾かなくても、演奏全体としては音が欠けません。
もう1つの理由は、コードの性格は、主に3度と7度の2音で決まるからです。3度はメジャー系かマイナー系かを、7度はメジャーセブンスかドミナントセブンスかマイナーセブンスかを決めます。この2音は「ガイドトーン」と呼ばれます。5度は、多くのコードで完全5度になり、コードの種類を区別する働きが小さいため、省かれやすい音になっています(ディミニッシュや♭5のように、5度自体が変化して重要になる場合は別です)。
この、ルート・3度・7度の3音だけで弾く、コンパクトな押さえ方を「シェルヴォイシング」と呼びます。
II-V-Iを、シェルヴォイシングで弾いてみよう
前のトピックで見た「II-V-Iの押さえ方」(Dm7・G7・Cmaj7)から、5度の音を1音だけ抜いてみましょう。
・Dm7: 4弦(5度のA)を弾かない
・G7: 2弦(5度のD)を弾かない
・Cmaj7: 4弦(5度のG)を弾かない
これだけで、シェルヴォイシングになります。新しい指の形を覚え直す必要はなく、1本弦を減らすだけです。
II-V-Iのシェルヴォイシング(ルート・3度・7度の3音だけ)
Dm7
G7
Cmaj7
フルヴォイシングと聴き比べてみよう
4音とも弾く「フルヴォイシング」と、5度を省いた「シェルヴォイシング」で、同じII-V-Iを聴き比べてみましょう。表の中では、フルヴォイシングにだけ入っている5度の音(点線の枠)が、シェルヴォイシングにはないことが目で見てもわかります。
「ドミナントモーション」のトピックで見た、G7の3度(B)と7度(F)が、半音でCmaj7の音(CとE)へ動く、という話を覚えていますか。シェルヴォイシングは、まさにその3度と7度を残した形です。だから、シェルヴォイシングでII-V-Iを弾いても、コードが解決していく感じはきちんと伝わります。
フルヴォイシングと、シェルヴォイシングのII-V-Iを聴き比べる(Cメジャーキー)
| 1つ目 | 2つ目 | 3つ目 |
|---|---|---|
ルート・3度・5度・7度の4音 | ||
Dm7 IIm7 1 D ♭3 F 5 A ♭7 C | G7 V7 1 G 3 B 5 D ♭7 F | Cmaj7 Imaj7 1 C 3 E 5 G 7 B |
ルート・3度・7度の3音(5度なし) | ||
Dm7 IIm7 1 D ♭3 F ♭7 C | G7 V7 1 G 3 B ♭7 F | Cmaj7 Imaj7 1 C 3 E 7 B |
m7とm7♭5は、シェルヴォイシングだと同じ形になる
Dm7と、Dm7の5度を半音下げたDm7♭5を比べてみましょう。押さえ方が変わるのは、5度の音がある4弦だけです(7フレット→6フレット)。ルート・3度・7度は、まったく同じ位置のままです。
つまり、5度を含まないシェルヴォイシングにすると、Dm7とDm7♭5は同じ形になります。この2つのコードは「5度がふつうか、半音低いか」だけの違いなので、5度を弾かなければ区別がつかなくなる、というわけです。実際に弾き分けたいときは、5度を含むフルヴォイシングを使う必要があります。
Dm7とDm7♭5の押さえ方(baseFretは5フレットから)
Dm7
Dm7♭5
5弦ルート・6弦ルートの押さえ方の例
ここまでに出てきたDm7・G7・Cmaj7は、5弦か6弦にルートがある形でした。同じ考え方(ルート・3度・5度・7度を、隣り合った弦に並べる)を使うと、maj7・7・m7・m7♭5の4種類とも、5弦ルート・6弦ルートのそれぞれで押さえられます。ここでは、ルートをCにそろえて、その一例をまとめておきます。
ここで紹介する押さえ方は、あくまで一例です。同じコードでも、指使いや弦の組み合わせを変えた、ほかの押さえ方があります。フルヴォイシングなので、5度を弾かないシェルヴォイシングにしたいときは、これまでと同じように、5度の弦を弾かなければ作れます。
5弦ルートの押さえ方の例(Cmaj7・C7・Cm7・Cm7♭5)
Cmaj7
C7
Cm7
Cm7♭5
6弦ルートの押さえ方の例
同じ4種類を、今度は6弦にルートを置いて押さえた例です。ルートは同じCですが、6弦でのCは8フレットになるため、5弦ルートの形より少し高いフレットになります。
6弦ルートの押さえ方の例(Cmaj7・C7・Cm7・Cm7♭5)
Cmaj7
C7
Cm7
Cm7♭5
シェルヴォイシング、フルヴォイシングの使い分け
厳密な決まりがあるわけではありませんが、一般的には次のように使い分けられることが多いです。
シェルヴォイシングは、コードチェンジがすばやい曲や、ベース・ピアノなど、ほかの楽器と一緒に弾くときに向いています。音数が少なく、指の動きも小さいためです。
フルヴォイシングは、ギター1本で弾く(伴奏がない)ときや、和音そのものの響きを豊かに聴かせたいときに向いています。
どちらが正解ということはなく、曲や場面に合わせて選ぶ、と考えておくとよいでしょう。
シェルヴォイシングは、ルート・3度・7度の3音だけを弾く、コンパクトな押さえ方です。コードの性格を決める3度と、ドミナントセブンスかどうかを決める7度を残し、5度を省くことが多いです。
m7とm7♭5は、シェルヴォイシングにすると同じ形になります。2つの違いは5度の音だけで、シェルヴォイシングはその5度を含まないためです。
